「魁陽亭」創業時から伝わる「九谷焼」

海陽亭に残る貴重な品々

創業以来、150年以上もの歴史を持つ海陽亭には貴重な品々が多数残されています。
小樽商科大学との共同研究によって、それらの資料の調査が日々進められている最中です。

今回はそれらの中から、海陽亭が「北前船(きたまえぶね)」の船主や船乗りたちに親しまれた料亭であったことを具体的に示す貴重な資料であり、「魁陽亭」創業時から伝わるといわれる「九谷焼(くたにやき)」について調査報告をご紹介いたします。

「魁陽亭」は平成30年5月に北前船日本遺産の構成文化財に認定されていますが、「九谷焼」は北前船で海を渡ってもたらされた北前船ゆかりの品と言えます。

海を渡った九谷焼

九谷焼の歴史は江戸時代の初期、明暦元年(1655年)にはすでに始まっていたと言われています。
石川県山中町九谷の地で良質の陶土が発見されたことを機に、加賀藩支藩である大聖寺藩初代藩主の前田利治が、藩士の後藤才次郎を肥前有田(佐賀県)やその他の地へ磁器の技能習得のために派遣し、九谷に窯を作ったところから九谷焼の歴史が始まります。

約40年ほどでこの窯は突如廃絶したとされていますが、この時期に製陶されたものを「古九谷(こくたに)」と呼んでいます。
その後九谷焼は古九谷廃絶の110余年後(1800年頃)、加賀藩による再興をきっかけに次々に新しい窯が興り、日常品も数多く作られたことから産業的な発展をしていきます。また、各々の窯が特徴ある画風を有し、九谷焼の持つ多彩な美の源流となりました。

九谷焼の特徴は力強く豪華な彩色です。
「九谷五彩」と呼ばれる、青(緑)、黄、赤、紫、紺青の濃厚な色彩の重なりが重厚な味わいを醸し出しています。
加賀百万石、前田家の豪放・華麗な文化の中で、その加飾技術は磨き上げられ豪華絢爛な作品の数々が生み出されました。

その九谷焼は江戸時代から明治時代にかけて往来した「北前船」によって各地に流通しました。
小樽にも当時の北前船主の巨万の富により産まれた北前文化を偲ばせる九谷焼の品々が残されています。

海陽亭に残る九谷焼

九谷焼鑑定の第一人者である石川県九谷焼美術館の中越康介氏によると、この九谷焼は先に述べた加賀藩による復興の中で、江戸時代後期の文化期に金沢の春日山窯に招聘された京焼の陶工、青木木米(あおきもくべい)の「写し」であることが分かりました。

木米は、九谷焼を再興した一人として有名だったため、後世多くの人によって「写し」が作られました。
海陽亭のこの九谷焼には「九谷」と銘があるだけで作者は分かりませんが、中越氏はその形状や色彩、銘などから明治時代に作られたものであると分析しています。

器の側面に「菊流水文」という流水に菊の花を配した文様が描かれていますが、そこで使われている紺青色(こんじょういろ)は俗に「花紺青(はなこんじょう)」と言われる白味を帯びた淡い青色で、江戸時代後期から明治時代に多く使われていた顔料によるものであるとのことです。

また、ところどころに金属の材を使って割れが修復されている形跡がありますが、これは「鎹(かすがい)止め」と呼ばれる中国の伝統的な技法です。
江戸時代から明治時代初期にかけて、主に中国から日本へ渡ってきた人たちがこの修復方法を用いていたとされ、貴重な直し方であることも分かっています。

九谷焼は古九谷の誕生から数えて360年以上経った今でも、その伝統美は受け継がれ続けています。

まだまだ眠る貴重な品々

今回ご紹介した九谷焼以外にも、海陽亭にはまだまだ貴重な品々が多く残されています。
2018年9月に株式会社魁陽亭と小樽商科大学との共同研究が立ち上がって以来、海陽亭に関してまだあまり知られていなかったことが少しづつ明らかになってきました。

海陽亭の前身である函館のビアホール「丸も」についてや、海陽亭で提供されていたメニューについて、さらには石原裕次郎に関することなど、ご紹介したいものがまだまだ沢山ありますので、順次本ブログでご紹介していきます。

また、調査には小樽商科大学の社会連携実践本気プロ「日本遺産による小樽の活性化」チームの学生さんたちも参加してくれています。本気プロのFacebookページでも調査の様子などを発信していますので、ぜひご覧ください。

参考資料
・石川県九谷焼美術館 : http://www.kutani-mus.jp/ja/kutani
・明治・大正に学ぶ彩色の技術-近代の顔料と下地の表現 : https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-25370175/25370175seika.pdf

調査協力
石川県九谷焼美術館主査・学芸員・博士(学術) 中越康介氏

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